持ち帰り残業、会社は把握してますか?
今日はノー残業デーです。株式会社B商事のAさん(女性)は就業時間中にできなかった、事務仕事を自宅に持ち帰って片づけようと、顧客の個人情報も含まれるUSBをバッグに入れて持ち出しました。
夜道を1人で歩いていると、何者かにそのバッグをひったくられてしまいました。
Aさんは必至で抵抗しましたが、持ち去られてしまいました。
Aさんは少しケガをしてしまっています。
会社は個人情報を持ちだし、紛失してしまったAさんに厳しい処分を下しました。
Aさんの過失だと一方的に叱責した会社側の対応はいかがなものでしょうか?
1.持ち帰り残業を黙認していませんか?
残業撲滅、ノー残業デーと強制的に社員を定時で帰るように指示している会社も多く存在しています。
社員は仕方なく、定時で帰りますが、実際は仕事が終わっているわけではないので、自宅に持ち帰って仕事をしているという、隠れ残業は少なくありません。
上司は、社員それぞれの抱えている業務量を把握していますか?
ノー残業デーだから早く帰れと言って帰らせたところ、実際は膨大な業務量を抱えていて、仕方なく自宅に持ち帰って仕事をしたり、翌日深夜まで残業となるのでは本末転倒です。
上司は就業時間の2時間前には部下の抱えている業務を確認して優先順位を指示したり、他の社員に割り振りを指示するなど対応をしなければなりません。
また、ノー残業デーにもかかわらず、明日までに書類を提出するように指示した場合、就業時間内に業務が終わらなかった社員は、仕方なく持ち帰って書類を完成させるようにするでしょう。
通常持ち帰り残業は、時間的場所的拘束がなかったり、上司からの指揮命令がなく自由に仕事ができることから、残業時間とみなされないものです。
しかし、仕事が就業時間に終わらないことがわかっているのに、定時で帰るよう指示し、持ち帰り残業を黙認していた場合は、残業時間とみなされる可能性が高いです。
ノー残業デーを設けるのは素晴らしい取り組みですが、隠れ残業の実態をしっかり把握しておくことが必要です。
2.個人情報の持ち出しはできないように強化
会社に許可なくCDやUSBなどの記憶媒体に保存して持ち出すことを就業規則で禁止しているものです。
しかし、会社の許可があって持ち出す場合でも、盗難や紛失のリスクについて考えておかなければなりません。
持ち出す場合は、管理簿にて持ち出す内容を記録し、上司が記録媒体の中身を確認するなど持ち出しマニュアル作成し、遵守することが必要となります。
そして用事が済んだら、その記録媒体を破壊、または完全に中身が消去されているかを上司は必ず最後までチェックします。
万が一盗難や紛失にあった場合に備えて、その記録媒体にはパスワードをかけておくようにしましょう。
3.社員の心を気遣いましょう
会社の許可なく個人情報を持ち出し、盗難に遭ってしまったAさんを一方的に責めて懲戒処分にしてしまうことは果たしていかがなものでしょうか?
会社側に落ち度はなかったのでしょうか?
もちろん会社の規則を破ってしまったAさんの責任は重いです。
しかし背景にはいろいろな事情がありました。
・ノー残業デーなのに仕事が終わらず、仕方なく自宅に持ち帰って仕事をすることにした。
・Aさんは膨大な業務量を1人で抱えていた
・上司は把握していなかった
などなど・・・
会社は、Aさんの事情をしっかり調査してから、懲戒処分を検討するべきです。
一番の問題は、ひったくりに遭い、Aさんがケガをしてしまったことです。
幸い、軽傷で済みましたが一歩間違えば、Aさんの命にもかかわることだったかもしれません。
Aさんは大きな恐怖から心に深い傷を負っていることでしょう。
会社はAさんの心にまずかかわることが大切です。
「あなたが無事でよかった」
「ケガの具合はどうですか?」
「1人で仕事を抱えさせてしまって申し訳なかった」
など、Aさんの心に配慮しながら、事情調査へと進んでいってください。
まず心にかかわることによって、Aさんは自分のしたことを冷静に自覚することができ、心から反省することができるでしょう。
Aさんについては心に深く傷を負っているでしょうからカウンセリングが必要かもしれません。
医師の面接指導や心理カウンセラーのカウンセリングを受けるように指示することも必要です。