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お役立ちコラム

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今後の動向が気になる、定年再雇用後の賃金低下について

同一労働同一賃金の定義


 運送会社のトラック運転手の3人が定年再雇用後も全く同じ業務に就いているのに賃金が下げるのは違法だと訴えた事件で、東京地方裁判所はこのような判決を出しました。

業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する

 定年前の賃金を支払うことを命じました。

 

 有期労働契約者の労働条件が,期間の定めがあるという理由により,無期労働契約者の労働条件と相違する場合、労働契約法第20条ではこのように規定されています。

労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない

 最近、国が「同一労働同一賃金」を目指している中で、定年前と同一の業務なのに定年再雇用後に大幅に賃金が下がることに不満を感じている労働者も多いことでしょう。
 そもそもなぜ定年再雇用後は賃金が下がってしまうのでしょうか?

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定年再雇用後の賃金低下について

  高齢化が進み、労働力不足が深刻である中、60歳定年で退職させることは廃止し、60歳以降も働いてもらおうと法改正がなされました。
 ただ、日本のサラリーマンの賃金体系は、職能型で、年齢、勤続年数によって増加する制度を取っている会社がほとんどです。
 そのまま60歳以降も同じ賃金制度で給与を支給することは、企業にとって大きな負担となってしまいます。
 そういったことを防ぐために、60歳で一旦定年退職とし、継続雇用を希望する人には再雇用という形で、新たに契約期間を定め、賃金を含めた労働条件も新たに見直すことが許されています。
 継続雇用制度を利用し、定年再雇用となった労働者には、老齢厚生年金に加え、賃金低下率に応じて雇用保険の高年齢雇用継続給付が支給され、労働者に不利益がないように国がカバーする制度が設計されています。

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国の制度設計との矛盾


 今回の判決により、現在定年再雇用で働いている労働者の賃金が見直され、定年前の賃金が支払われることとなった場合、国が設計した定年再雇用後の賃金低下による補てんがなくなるということは、国の負担が大幅に減ることになります。
 これは、国が設計した再雇用制度そのものを否定しているように感じられます。

 今後の最高裁でも同様の判決が出た場合は、高年齢雇用継続給付や老齢厚生年金制度そのものの改正も必要となるでしょうし、日本の年功序列型の賃金制度は完全に廃止され、職務型の仕事内容による賃金制度が確立することになるでしょう。
 大企業ではすでに定年を65歳にしたり、定年制度そのものを廃止している会社も増えてきていますが、中小企業にとっては定年再雇用後の仕事内容を変えて限定的にしてしまうと業務に支障が生じますし、また仕事内容を変えずに定年前と同様に賃金を支払い、昇給もしなければならないとなると、経営状況にも影響してくるのではないでしょうか?

 最高裁でも同様の判決が出た場合には、現在再雇用で働いている労働者から会社への不満が続発し、大混乱が起きてしまうのではないかと懸念されます。

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