転職決まったと安心していませんか?競業避止義務について
同業他社への転職は認められるのか?
一般的には退職後に同業他社への就職を禁止するような競業避止義務を課すには、就業規則の規定や個別の合意などの根拠が必要となります。
競業避止誓約書を退職時に提出させる方法もありますが、急にそれを求めると退職者は拒否する可能性がありますので、退職時には競業避止誓約書を提出しなければならない旨を事前に周知させておきましょう。
競業避止義務を課すために必要な合理性
退職後の競業避止義務は従業員の転職活動に制限を与えることになります。
そのため、必要最小限の合理的な範囲に限らなければなりません。
過去の判例にもその合理性についての判断を示しています。
競業避止義務は従業員の自由な職業活動を制限し、従業員が被り不利益が大きいため、その内容が必要最小限であり、義務を課すに足りる事情が存在するなど合理的なものであることが必要である(キョウシステム事件 H12.6.19大阪地裁判決) |
競業避止義務の範囲が合理的な範囲を超え、職業選択の自由を不当に拘束する場合は、公序良俗に反し無効であり、以下の要件を考慮して判断することとなる。 ①競業を制限する期間の長さが合理的であること ②競業を制限する地理的範囲が合理的であること ③競業を制限すべき職種・業種の範囲が合意的であること ④競業避止義務に見合う何らかの代替え措置が講じられていること (ファセコ・ジャパン・リミティッド事件 昭和45.10.23奈良地裁判決) |
従業員に任意で誓約書を提出させ、労総契約上の競業避止義務に根拠を与えたと考えると、競業避止義務の合理的な範囲(①~③)、競業避止義務に見合う代替え措置④(退職慰労金の支払いなど)から合理性が認められれば、退職後の競業避止義務に有効性があると考えられます。
競業避止義務違反をした元従業員への措置
競業避止義務を課していてもそれに違反して競業関係にある会社に就職したり、起業する可能性も大いに考えられます。
そのことによって前職の会社が営業上の利益を損ねられたり、その恐れがあるときには、会社は以下のような法的措置をとることが可能だと考えられます。
①競業行為の差し止め
②損害賠償の請求
③退職金の不支給・減額
競業関係会社への就職を阻止するためには?
競業避止義務を課すのは人材を通じた技術情報の流出防止のためです。
防止方法としては、営業秘密などの業務上知った秘密を第三者に開示しないことを契約する「秘密保持契約」を締結する方法と、退職後に競業他社へ就職しないことを契約する「競業避止義務契約」を締結する方法があります。
秘密保持契約だけでは競業避止は抑止できません。また、競業避止義務だけでは職業選択の自由を阻害されることとなります。
秘密保持と競業避止義務の両方の誓約書を提出させることで、競業他社への就職すること自体を阻止できるため、技術情報の流出を事前に防止することが可能となり、技術情報の流出に対するより強い抑止力になります。