義務化の前に考えよう年次有給休暇の計画的付与制度
年次有給休暇の計画的付与制度とは?
政府は有給休暇取得義務化に向けて法改正を進めています。
その前に現存する任意の制度である年次有給休暇の計画的付与制度の導入をお奨めいたします。
年次有給休暇の計画的付与制度とは社員が保有する年次有給休暇を、使用者が予め取得日を特定して計画的に(強制的に)取得させる制度です。
計画的付与の対象とできる日数は、各社員が、保有する有給休暇日数の5日を超えた分となります。
ただし、使用者が一方的に導入することはできません。
就業規則に規定することと労使協定の締結が必要です。
それぞれの例は次のとおりです。
尚、労使協定については届け出義務はございません。
(年次有給休暇) 第○条 従業員は、年次有給休暇を取得使用とするときは、所定の手続きにより、事前に届け出なければならない。 (2)会社は、前項の規定により請求された月日に年次有給休暇を付与することが事業の正常な運営を妨げると認められた場合においては、これを他の月日に変更することができる。 (3)第1項及び前項の規定にかかわらず、会社が労働組合との協定により年次有給休暇を計画的に付与することとした場合においては、その協定の定めるところにより同休暇を付与するものとする。 (4)従業員は、その保有する年次有給休暇のうち前項の労使協定に係わる部分については、その協定の定めるところにより取得しなければならない。 |
一斉付与方式
企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方法です。
Ex)飛び石連休の間の平日を休日にして連休にしたり、ゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始休暇と合わせて大型連休にしたりする方法です。
※年休日数を保有していない(新規採用者)または少ない者(パート社員など)に対してはプラスの有給休暇を与えるか、それができなければ使用者の都合による休業扱いとなり休業手当(賃金の6割)を支払わなければならないのでご注意ください。
連休が増えることにより従業員は旅行に行く機会も増え、リフレッシュできることにより心身ともに健康になり、仕事に対するモチベーションも上がります。
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(例) ○○株式会社と○○労働組合とは、標記に関して次のとおり協定する。 1 当社の本社に勤務する社員が有する平成○年度の年次有給休暇のうち4日分については、次の日に与えるものとする。 4月26日、30日、5月2日、7日 2 当社社員であって、その有する年次有給休暇の日数から5日を差し引いた残日数が「4日」に満たないものについては、その不足する日数の限度で、第1項に掲げる日に特別有給休暇を与える。 |
班・グループ別の交替制付与方式
従業員を部・課内でAグループとBグループに分け、Aは8月10日から12日まで、Bは8月16日から18日までというように、交替で年休を付与する方法です。
一斉付与方式と違い、事業所は休業しなくてよいので、休業手当を支払う必要のある者はいません。
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(例) ○○商事株式会社と同社従業員代表○○○○とは、標記に関し、次のとおり協定する。 1 各課において、その所属の社員をA、Bの2グループに分けるものとする。 その調整と決定は各課長が行う。 2 各社員が保有する平成○年度の年次有給休暇のうち5日分については各グループの区分に応じて、次表のとおり与えるものとする。
3 社員のうち、その保有する年次有給休暇の日数から5日を差し引いた日数が「5日」に満たないものについては、その不足する日数の限度で、第2項に掲げる日に特別有給休暇を与える。 |
個人別付与方式
使用者が個人別に年休付与計画表を作成し、年休を与える方法です。
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(例) ○○商事株式会社と同社従業員代表○○○○とは、標記に関して次のとおり協定する。 1 当社の従業員が保有する平成○年度の年次有給休暇(以下「年休」という。)のうち、5日を超える部分については6日を限度として計画的に付与するものとする。なお、その保有する年休の日数から5日を差し引いた日数が「6日」に満たないものについては、その不足する日数の限度で特別有給休暇を与える。 2 年休の計画的付与の期間及びその日数は、次のとおりとする。 前期=4月~9月の間で3日間 後期=10月~翌年3月の間で3日間 3 各個人別の年休付与計画表は、各回の休暇対象期間が始まる2週間前までに会社が作成し、通知する。 4 各従業員は、年休付与計画の希望表を、所定の様式により、各回の休暇対象期間の始まる1カ月前までに、所属課長に提出しなければならない。 5 所属課長は、第4項の希望表に基づき、各従業員の休暇日を調整し、決定する。 |
計画的付与制度導入についての留意点
計画的付与が決定した後で使用者の都合により時季変更が生じた場合は時季変更できるのでしょうか?
厚生労働省の見解としては
計画的付与の場合には、労基法39条4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使しえない。 (昭和63.3.14 基発150号) |
つまり、使用者は「請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる」という事情があった場合も、計画された年休の時季を別の時季に代えることができないとされています。
対策としては協定書の中に特別な事情による変更について取り決めしておく必要があります。