契約書の中身をしっかり読みましょう。請負契約の落とし穴!
お仕事を始める時、必ず契約書を交わすこととなると思いますが、その契約書の中身をしっかり読んでいますか?
「こちらにご捺印ください」と言われるがまま印鑑を押していませんか?
もしかしたら、そこには大きな落とし穴があるかもしれません。
1.請負契約と雇用契約の大きな違い
会社の業績が悪化し、会社と雇用契約を結んでいたのに、「請負契約に変更してくれませんか。お給料は変わりませんよ。」と言われ、すんなりOKしてしまうケースがあります。
請負契約について知識がないと、お給料が変わらないならいいかと思いがちですよね。
しかし、そこには大きな違いがあるんです。
① 請負契約は一連のお仕事を完成させる契約
雇用契約は労務を提供してその報酬を支払う契約ですが、請負契約は一連のお仕事を完成させることを約束する契約ですので、そのお仕事が完了したらそこで契約は終わってしまいます。その後、新しいお仕事がなければ、そのままとなってしまうことも覚悟しなければいけません。
② 健康保険・労働保険の適用がない
請負契約になると、会社の社員ではなくなってしまうため、会社はその労働者を保険に加入させる義務がなくなってしまいます。
ご自分で国民健康保険と国民年金に加入することとなります。
なので、ケガや病気で仕事をお休みしたりした時の傷病手当金や、育児休業、介護休業を取得するときの給付金の支給はありません。
労災も適用されないことになります。
③ 労働基準法が適用されない
雇用されているわけではないので、労働基準法その他の労働法規が適用されません。
最低賃金を下回ることも可能ですし、割増賃金も支払われません。もちろん有給休暇などもありません。
解雇予告の義務もありませんので、突然契約終了になることも考えられます。
④ 退職金がもらえなくなる
もし、請負契約を承諾するのであれば、雇用契約していた期間分の退職金が支払われるのか確認しましょう。
⑤ 福利厚生制度が利用できなくなる
年に1回の健康診断など、会社が負担してくれていたものがなくなります。
2.会社側で気を付けること
社員が請負契約になることを承諾し、雇用契約から請負契約に変更した後は、社員ではありませんので今までのように扱うことはできません。
どう違うのでしょうか?
① 業務の依頼や指示について諾否の自由を与えなければなりません。
② 請負契約になると、その労働者には今までのように業務に関する指示は できません。本人の裁量によることになります。もし指示をしてしまうと、偽装請負となります。
③ 請負契約している業務以外の仕事をお願いすることはできません。
④ 報酬についてはその業務の成果に応じて決定することになりますので、時給、月給などの人件費という考えではありません。
⑤ 業務の完成に必要な時間以外は拘束することはできませんので、労務時間の管理をすることもできません。
⑥ 本人が所有している器具や機械の使用を認めなければなりません。会社の物を使いなさいと強制することはできません。
請負契約については契約書ではなく、実態で判断されます。
最近では大手ゼネコンと業務委託していた1級建築士の男性が、現場事務所で倒れて亡くなった事件で、裁判所は会社に安全配慮違反があったとして損害賠償の支払いを命じました。
会社側はその男性に名刺や作業着を支給し出向者として管理していたことから、実態では労働者として判断され労災認定されていたのです。
請負契約はそもそも職人のようなプロフェッショナルな方の働き方に合った契約と言えます。
会社は、経費削減策として請負契約にするのではなく、仕事の実態をきちんと判断したうえで、検討するようにしましょう。