愛の鞭、そこに愛はありますか?
株式会社A工業のK課長は、何度言ってもミスを繰り返してしまうMさん(25歳)がまた同じミスをしてしまったので、血が上って思わず怒鳴りつけてしまったそうです。
そしてMさんは「パワハラで訴える」と言って会社に来なくなってしまいました。
普段は温和なK課長は一瞬の怒りを抑えることができなかったことを悔やみ、すっかり落ち込んでしまいました。
さて、昔なら怒鳴る上司なんて当たり前だったのが、今は一歩間違えばパワハラ扱い。
叱り方に気を遣わなければいけない時代になってしまいました。
ではどのように気を遣えばいいのでしょうか?
1.叱られ慣れてない若者たち
最近の20代の若者の中には達成感を味わっている人が少なくなっています。
自分の意思決定で物事を進めてきた経験も少ないことから、自分が必要とされているという価値を感じている人も少なく、自分に自信がない人も多いのです。
自分に自信がないのに、さらに輪をかけて叱られてしまったら自分の存在価値はないんだと思い込んでしまうのです。
自分に自信がないのは、褒められていないのも原因です。
K課長の場合、普段からMさんにたいしてネガティブなイメージしか持っていなかったため、褒めるということをほとんどしていなかったようです。
今の時代は能力不足だからと簡単に解雇することはできません。それならば部下を何とかやる気にさせるためには、その都度褒めるということを習慣にすることが大切です。
何でもいいんです。
「○○さん、いつも綺麗にファイリングしてくれてありがとう」
「○○さんの机はいつもきちんと整頓されていて気持ちがいいね」
1日に3回は褒めると目標を掲げるのです。
褒めるときのポイントは、その行動、何をしたことが褒められるべきことなのかを明確にすることです。
それを繰り返すことによって、何をすれば褒められるのかを学び、もっと褒められたいという気持ちになります。
人は誰だって認めてもらいたいという気持ちを持っています。
だからといってミスをしたことを見過すわけにはいきません。
ミスが起きたら頭ごなしに叱るのではなく、「なぜこのようなことが起きたのか?」それを相手に気づかせることが大切です。
そしてミスを繰り返さないための再発防止策も考えさせましょう。
最後には必ず「あなたに期待している」という激励も忘れないようにしましょう。
一方的に叱りつける上司は、このプロセスなしに叱ることだけに集中してしまっているので、余計に部下はネガティブ思考に陥ってしまうのです。
それがさらに反発心となり、「パワハラ」という言葉を使ってしまうのです。
2.日頃のコミュニケーションは名前を呼ぶことから
部下とのコミュニケーションは日頃から飲みニケーションしてるから大丈夫と思っている方も多いのではないでしょうか?
今の若者の中には飲みに誘われること自体がパワハラだと主張している人もいます。
ではどうやって部下とコミュニケーションを深めていけばよいのでしょうか?
それは相手の名前を呼ぶことです。
お店で「○○様いらっしゃいませ」と言われると何だか特別な感じがしませんか?
職場でも単に「おはよう」と言われるよりは、「○○さんおはよう」と言われた方が親しみを感じますよね。
部下に対しても名前を呼ぶことで、自分は認められているという安心感につながります。
相手に対して安心感があると、いろいろ話したくなるのが人間の心理です。
何でも話せる間柄になれるということは、コミュニケーションも深まっているということになりますね。
仕事で困っていること、助けてほしいこと、上司に言いづらくて我慢している部下もたくさんいます。
まずは名前を呼ぶことから始めてみてはいかがでしょうか?
3.相手の話をしっかり聴く
ミスをした部下はミスをしたくてしたわけではありません。
必ず本人にも言い分があります。
その言い分を思う存分話させてあげてください。そして上司はその話を途中で遮ることなく、しっかり聴いてあげてください。
ミスについて指摘するのはその後です。
「ちゃんと聴いてもらえた」という安心感から冷静になれ、自分のミスについて自覚することができます。
4.触らぬ神に祟りなしは禁物
一番よくないのは、パワハラを怖がって部下と距離を置いてしまうことです。
「触らぬ神に祟りなし」ということわざがありますが、部下は「触らないで、ほっといて」とは思っていません。むしろ「認めてもらいたい」をいう気持ちが強いのです。
会社側も管理職の方にパワハラ研修などで、パワハラに対する注意事項ばかりを強調していると、管理職の方は委縮してしまい、管理職としての務めを果たせなくなってしまいます。
パワハラにならない叱り方、部下を育てる叱り方を重点に置いて指導していくことが大切です。
愛の鞭だと思って叱ってもそこに愛がなければ、ただの痛い鞭です。
叱りたくなったら一呼吸おいて何を部下に伝えたいのかを整理してから、(メモに書きだすのも方法です)話をするように心掛けてみましょう。