サラリーマン議員は許される?
会社に在職中に市会議員に立候補をしようと決断したMさん。
会社に申し入れをしたところ・・・
「何を言ってるんだ君は!?会社を辞めて専念しなさい!」
と言われてしまいました。
会社は辞めなければならないのでしょうか?
1.在職中に公職に就くことは止められない
労働基準法第7条では、公民権の行使や公の職務の執行のために労働者から必要な時間を求められた場合はそれを拒めないと規定されています。
公民権の範囲は行政解釈では以下のように規定されています。
① 法令に根拠を有する公職の選挙権及び被選挙権
② 憲法の定める最高裁判所裁判官の国民審査
③ 特別法の住民投票
④ 憲法改正の国民投票
⑤ 地方自治法による住民の直接請求
⑥ 選挙権及び住民としての直接請求権の行使等の要件となる選挙人名簿の登録の申し出等
選挙の応援や、うぐいす嬢として参加することは公民権の行使とは認められません。
また、住民票や課税証明書を役所に取りに行くことなどは公民権の行使とは言えませんので、会社の許可を得て、休暇を取るなどしてから行くようにしましょう。
公の職務の範囲は以下の通りです。
① 衆議院議員その他の議員、労働委員会、陪審員、検察審査員等、法令に基づいて設置される審議会の委員等の職務民事訴訟法第271条による証人
② 労働委員会の証人などの職務
③ 選挙法第38条の選挙立会人などの職務等
予備自衛官の防衛召集、訓練召集・非常勤の消防団員の訓練召集は該当しないとしています。
2.業務に支障が出るので拒否したい
上記で述べたように労働基準法第7条では公民権の行使や公の職務に就くための時間を従業員から請求された場合はこれを拒否できないとしています。
ただし、業務に支障がある場合は、公民権の行使や公の職務を妨げない範囲で、その時季を変更することは可能です。
3.賃金の支払い
公民権の行使の時間は請求されれば、拒否できませんが、有給とするか無給とするかは会社が決めることができます。
トラブルの元とならないように、就業規則に無給なのか有給なのかを明記しておきましょう。
4.休職扱いにできるか
公職に就いている間、業務に支障がある場合は公務休職とすることができるように規定している会社も多いです。
休職については会社には規定する義務はありませんが、優秀な社員が公職に就くことになった場合、公職の任期満了に伴い復職できるようにしておきたいところです。
5.解雇はできるのか
過去の判例では
「使用者が、労働者が地方議会議員等の公職に就任したこと自体を解雇事由とすることは許されないが、公職就任により著しく業務に支障を生ずる場合、或いは業務の支障の程度が著しいものでなくとも、他の事情と相俟って、社会通念上相当の事由があると認められる場合は、使用者のなす普通解雇は正当として許されると解するのが相当である」(社会保険新報社事件)
としています。
公職に就いたことだけで解雇とすることはできませんが、公職に就くことによって、業務に支障がある場合は普通解雇とすることもやむを得ないということです。
一方、懲戒解雇とすることは無効となります。
懲戒解雇は公職に就き、業務に支障を与えたことに対する制裁です。
過去の判例では
「労働者に対し労働時間中における公民としての権利の行使および公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは」、このような条項は労基法の規定の趣旨に反し、無効と解するべきである。「従って、所論のごとく公職に就任することが会社業務の遂行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に付するは格別」、この同じ条項を適用して従業員を懲戒解雇に付することは許されない。」(十和田観光事件)
としています。
普通解雇とする場合でも、当該従業員としっかり話し合い、やむを得ないというところまで行きたどり着いたところで、普通解雇という決断をするようにしましょう。