女装(男装)して出社してくる社員を懲戒処分したい
女装男子が流行っている現代ですが、会社に女装(男装)して出社してくる社員がいたとしたら、その社員を懲戒処分することは問題ないのでしょうか?
1.その人は性同一障害かもしれない
就業規則で「職務中は、社会通念上、職務にふさわしい服装及び外見を整え、職務にあたること。」のように服務規律で身なりについて規定している会社も多いと思います。
憲法上で自己決定権や表現の自由が規定されており、服装の自由を侵害することはできません。
ただし、その社員の身なりが、仕事に支障がある(お客様に不快な思いをさせるなど)恐れもあるので、そこは就業規則を規定しておくことにより、懲戒処分することは合法だといえます。
注意したいのが、その社員が性同一性障害だった場合です。
過去の裁判では、戸籍上は男性である性同一性障害の社員を会社の命令に従わず、女装をしてきたことを理由に解雇したことは無効だとしています。(性同一性障害解雇事件 H14.6.20 東京地裁)
就業規則に規定された服務規律違反があったことは認められるが、重大で悪質ではないことから懲戒解雇処分するには値しないということなのです。
2.社員が性同一性障害を申し出てきたら
性同一性障害は正当な病気です。
心臓病を患っていることを申し出てきた社員を解雇しますか?
性同一性障害の人に本人の心に反した性の強要をすることは、本人の精神的苦痛が多大であることを理解する必要があります。
真偽を確認するために本人が性同一性障害を証明する書面を提出を求めることも有効的でしょう。
3.理解を深めるために
会社は認めていたとしても、他の社員からの偏見は少なからずあると思います。
トイレや更衣室など男性女性で使い分ける設備については、トラブルに発展する可能性もあります。
社員旅行のお風呂についても注意すべきところです。
社内で性同一障害の勉強会を開くなどして社員全員に理解を深めてもらいましょう。
性同一障害について取り上げたドキュメンタリー番組を録画して社員に視聴してもらうことでイメージしやすく、ビジュアル的理解が深まるでしょう。
4.ジェンダーハラスメントの防止
ジェンダーハラスメントとは「男らしさ」「女らしさ」を強要する嫌がらせです。
「男のくせにしっかりしろ」「女のくせに口出すな」などと言うことはジェンダーハラスメントに当たります。
性同一性障害の人に男性(女性)であることを強要されることは本人にとって屈辱以外の何物でもありません。
自分の常識や価値観で「男らしさ」「女らしさ」を判断しないことが大切です。
性同一性障害の社員に対する多様な取り扱いをしている会社も増えてきています。
例えば同性同士の結婚を認めて、扶養手当を支給したり、結婚休暇を取得する権利を与えるなどです。
さまざまな事情を抱えた社員に多様な対応をしていかなくてはならなくなってきています。
それに応じた就業規則を規定し、そういった社員が離職という道を選択しないように社内制度を整えていきましょう。
私自身も初めて就職した会社に性同一性障害の方がいました。
特に偏見を持つことはありませんでしたが、女子トイレで出会ったときはちょっと気まずい雰囲気になったことを覚えています。
会社からは理解のために性同一性障害についてのビデオを視聴させられました。
その方とは普通に女子の会話ができましたし、何の違和感もなかったです。逆に楽しかったのを覚えています。
ドールハウスを作ってくださったのがとても嬉しく印象的でした。
自分がどのような価値観を持つかで接し方も変わるのだろうと思います。