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ついき社会保険労務士事務所
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お役立ちコラム

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長期化するがん治療、退職を選びますか?

小さな町工場に努めるMさんは、胃がんの宣告を受けました。

幸い早期発見だったので、治療は長引くことはないそうですが、本人は抗がん剤治療をしながら会社に出勤したいとおっしゃっています。

そんながんを患った社員への対応はどうすればよいのでしょうか?

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がんに罹った社員と仕事

 日本では2人に1人ががんに罹ると推定されていて、いつ誰が罹ってもおかしくないのです。

 特に働き盛りの若い人ががんに罹った場合進行も早く、治療に専念せざるを得なくなります。

 がんに罹ったことで会社から解雇されるのではないかという恐怖から、自分ががんに罹っていることを会社に隠したまま働く人もいます。

 また、自分ががんに罹ったことで会社に迷惑をかけるだろうと自ら退職を選ぶ人も少なくありません。

 本人に働きたいという意志があるのに、辞めてしまうことは会社にとっても大きな損失になります。

 そして、両立支援が勧められている現代では、会社は病気を抱えた社員が勤務継続できるような取り組みをしていかなくてはなりません

 それでは会社はどのような取り組みをしていく必要があるでしょうか?

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がんに罹った社員が出る前に備えておくこと

① がんに罹っても退職する必要はないことを日頃から周知しておく。

 社員は会社に迷惑をかけたくない、という気持ちが強いです。

「辞めなくてもいいよ」と言っても本人の気持ちとは裏腹に退職を選ぶ人も少なくありません。

 がん治療しながら働いている人の実例をいつでも提示できるように用意しておくといいでしょう。

 

② 両立支援に理解のある職場づくり

 がんを患った社員への偏見は少なからずあると思います。

 せっかく本人は両立を頑張っているのに、周りの偏見により会社に居づらくなって退職してしまっては本末転倒です。

 そんな事態にならないよう偏見をなくすために、日頃からがんについての勉強会を職場内で実施することをおすすめします。

 

③ 相談窓口の設置

 自分ががんであることを報告するのはとても勇気のいることです。

 デリケートな話でもありますので、相談窓口を設け本人が話しやすいような相談窓口を設置した組織作りが必要です.

 そこからどういった対応をしていくべきかを担当部署の管理職と相談していくこととなります。

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社員ががんであることを相談して来たら

① 退職をすすめない

 本人が働きたいという意思を尊重し、辞める必要はないということ、会社が全力でサポートするというように会社の両立支援の制度について説明します。

 本人はがんに罹って相当な心の負担を抱えています、それに加えて会社が突き放すような対応をしてしまっては、闘病する忍耐力も薄れてしまいます。

 

② 利用できる公的制度を説明

 がんの治療は高額であり、長期化する恐れもあります。

 その間の経済的な負担も相当なものです。

 健康保険の高額医療療養費、傷病手当金など利用できる保険制度を説明し、必要な書類を事前に渡しておきましょう。

 

休職制度の利用

① 社員が無理しているなと感じたら休職をすすめる

 かなりの重度でありながら、治療をしながら通勤すると言い張っているが、業務に支障が起きているような場合、当該社員には、医師の診断結果を元に、休職を命じることができます。

 休職は会社の権利です。休職を命じて、一定期間休職して治療に専念する義務が社員にはあるのです。

 もちろん復職が前提ですから、その旨を説明し忘れないように注意しましょう。

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② 休職中の対応

 がんと闘うのは辛さと不安と孤独でいっぱいです。

 休職中会社から見放されてしまうのではないかという不安も大きいでしょう。

 「私たちはあなたが復帰してくるのを待っていますよ。だから安心して治療に専念してくださいね。」

という気持ちを込めて、会社の今の状況を伝えたり、本人の治療状況を確認するなど、休職中もコミュニケーションを取るようにしましょう。

 職場の方々から動画や写真などでメッセージを伝えるのも、本人にとって励みになりますね。

 あまり連絡を取り過ぎるのも本人の負担になりかねないので、定期的に診断書を提出してもらうタイミングに限定する、配慮も必要です。

 

③ 欠員の補填

 即戦力の社員ががんに罹って休職してしまった損失を残った社員でカバーするのは至難の業です。

 休職期間中だけ他の部署から応援に来てもらったり、契約終了予定だった社員に契約延長をお願いするなど、残された社員の負担が大きくならないように社内にも目を配りましょう。

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復職願の提出があったら

① 主治医の意見を求める

 単に復職可能ですという診断書だけでは、会社がどのように対応すればいいのかはわかりません。

 実際に主治医から、今後の治療スケジュール、原職に復帰することが可能か、副作用の程度などを確認しておくことが必要です。

 

② 回復程度に応じた柔軟な就業条件の対応

 復職したからといってがんに罹る前の体力まで回復していることはまずないと思います。

 そのためにも会社としても時短勤務、時間外労働の免除、通勤時間の緩和措置など柔軟な対応が必要です。

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復職後の対応

① 現状の把握

 本人は辛いながらも一生懸命、休職してしまったロスタイムを取り戻そうと必死です。

 せっかく復職したのに、体の負担が大きくて勤務が続けられず退職となってしまわないように配慮が必要です。

 最悪な場合、その負担が影響してがんが悪化する可能性もあります。

 復職してからも、本人の就業状況を聞いて今の仕事が体の負担になっていないか確認したり、本人が職場内で精神的負担を抱えていないかなど、定期的に面談の機会をもつことが大切です。

 また本人の家族から家庭での様子を聞くことも、本人がストレスなく仕事と両立できる環境づくりに有効的だと思われます。   

 

② 同じ職場の上司のフォロー

 かといっても、本人は我慢して本当のことを言っていないということも考えられます。

 本人の就業中の様子や、業務遂行が滞ってないか、など上司からの情報も聴取しましょう。

 上司も本人への対応にストレスを抱えているかもしれませんので、上司へのフォローも大切です。

 

③ 職場の協力

 がんは誰でもなる可能性があることを、従業員に理解してもらい、がん治療を続けながら働く社員を社員同士で支え合い、配慮する必要があります。

 たとえば、本人は抗がん剤の副作用などで疲れやすいので、定期的に休憩をとれるように声掛けをしてあげたり、食事が不十分な場合は、ちょっとした口に入れやすいものを差し出してあげたり・・・。

 ちょっとした思いやりで、本人の気持ちの負担が軽くなる可能性もあります。

 自分もいつ同じ状況になるかわからないのです。

 偏見や誤解、下手な同情は控えて、がんに罹った社員に接するように、職場への協力を保健師などから指導してもらうようにしましょう。

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 中小、零細企業ではそこまでの手厚い対応は難しいとおっしゃる社長様もいらっしゃると思います。

 休職制度は法律で規定されているわけではなく、会社の任意の制度なので休職制度自体を取り入れていない会社も少なくないと思います。

 人材不足の中、新たに社員を採用し、育成する時間と人件費のことを考えると、がんに罹った社員を退職させる方向へすすめるのではなく、復職を前提とした休職制度を設けることで、2重の損失を防ぐことができるのではないでしょうか?

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