正しく導入しよう!定額残業制について
導入増加傾向にある定額残業制
近年残業代請求の裁判が増加しています。
労働基準法に肖った名ばかり管理職や営業マンの事業場外労働の適用への疑問など、労働基準法に則って残業代を支払わないとしていても実態は違っていて未払い残業代を請求されるというトラブルが相次いでいます。
「残業すればするほど割増賃金が増える」という現在の労働基準法はワークライフバランスを重視する今の時代には合致していないように感じます。
時代に合っていない労働基準法をうまく利用して裁判を起こすという事態を未然に防ぐために、定額残業制を導入している会社も増えてきています。
定額残業制を導入するメリット・デメリット
☆会社側のメリット☆
・みなし残業内に全社員の労働時間が納まっていれば、残業代の計算する手間が省ける
・事前に残業代を含んだ人件費の予算が立てやすい
☆社員側のメリット☆
・残業をしていなくてもみなし残業分の賃金がもらえる
・同じ量の仕事を時間内に終わらせる社員と残業をして終わらせる社員とも同じ賃金なので不公平さをなくすことができる。
★会社側のデメリット★
・実際は時間内に仕事を終わらせる社員が多いと、余分な賃金を払ってしまうことになってしまう。
・みなし残業以上の労働時間分は割増賃金を支払わなければならない。
★労働者側のデメリット★
・深夜労働や休日出勤をしてもみなし残業内に収まっていれば割増賃金を支給されることはない。
定額残業制を導入するときに注意すること
①時間管理は確実に
実際の残業時間が定額残業代に相当する時間を超えた場合には、その超えた時間分については割増賃金を別途支払わなければなりません。
みなし残業としているからといって、就業時間の管理を怠ることは思わぬ未払い残業代請求という事態にもなりかねませんので、社員の就業時間はしっかり管理しましょう。
②定額残業代の金額を明確に
裁判の判例を見ると、残業代に当たる部分が明確に区別されているかが判決を左右しています。
基本給や手当に定額残業代を含む場合は、何時間分の残業代が何円分含まれているのかを明確にし、就業規則や賃金規程に明示することが必要となります。
ただし、36協定の上限時間を超える定額残業代の設計はしないようにしましょう。
③別途支払う割増賃金の取り扱いを明確に
みなし残業時間以上の労働時間分は別途割増賃金を支払う旨を就業規則や賃金規程には必ず明示しましょう。
判例では形式上の別途支給の割増賃金ではなく、正確に時間管理を行っているので別途支給が可能である、または実際に支給しているという、適切な運用と実績が重要なポイントとなっています。
④定額残業制の導入・変更時には社員の同意を得ること
従業員の同意がなく定額残業制を導入・変更してしまうと、その内容が社員にとって不利益な場合は、不利益変更となり定額残業制は無効となってしまう可能性もあります。
導入前の賃金よりも減額となっていないか事前に各社員の過去の賃金と比較して設計します。減額となってしまう場合には賃上げなど補てん策を考えましょう。
個別の同意が必要となりますので、個々に労働条件通知書に署名してもらう、労働契約書を交わすなどの方法で同意を得ます。
その際には、社員全員が理解できるように定額残業制についてしっかり説明することが必要です。
定額残業制が社員にとってメリットな制度であることをしっかり理解してもらうことが大切です。