普通解雇・懲戒解雇・諭旨解雇・整理解雇の違い
解雇について
厚生労働省が発表している雇用指針(雇用ガイドライン)では、期間の定めのない労働契約について、原則として使用者は30日前に予告すれば解雇をする権限を有しているとしています。
しかし慎重に解雇権を行使しないと、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、その解雇権は権利の乱用として無効となるとしています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条) |
一方、期間の定めのある労働契約についてはやむをえない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間、解雇をすることができないとされています。
客観的に合理的な理由とは
1.労働者の労務提供の不能による解雇
2.能力不足、成績不良、勤務態度不良、適格性欠如による解雇
3.職場規律違反、職務懈怠による解雇
4.経営上の必要性による解雇
5.ユニオンショップ協定による解雇
これらの客観的に合理的な理由の裁判における立証は、就業規則に定める解雇事由に該当するかが争点となります。
そして、該当性があるとしても社会通念上相当であるかがが検討されます。
就業規則には「勤務態度が著しく不良」など、「著しく」と明記しているとどの程度なのかの判断が難しいので、あいまいな表現は避ける方がよいでしょう。
解雇の種類
1.普通解雇
労働契約を継続しがたいやむを得ない事情があるときに、就業規則に則って行われる労働契約の解除です。
具体的には、労務提供不能、労働能力不足、協調性の欠如、健康問題、勤務態度不良などがあげられます。
これらの事実があったとしてもすぐに解雇してしまうと、本人の改善の余地があった場合解雇権の濫用と判断される可能性が高いです。
口頭の注意から始まり、始末書の提出など段階を経てから解雇へと進めていくことが大切です。
この場合は解雇予告通知、解雇予告手当の支払いが必要となります。
2.懲戒解雇
重大な規律違反があった場合に罰として労働契約を解除することです。
労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けた場合は即時解雇することができます。
退職金を全部又は一部を支払わないとする場合は、退職金規程には必ず規定しておき、就業規則にも明記しておくとよいでしょう。
3.諭旨解雇
懲戒解雇に相当する程度の事由がありながら、会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇のことです。
諭旨解雇は懲戒解雇とは違い、退職金は支給することが原則ですので、例外的に一部支給しないこともある場合は規定しておくことが必要です。
諭旨解雇と似た「諭旨退職」があります。
諭旨解雇よりも緩い措置で、懲戒解雇に相当する社員を一方的に辞めさせるのではなく、退職願の提出を促し、依願退職という形で扱います。
退職願が提出されない場合は諭旨解雇として扱います。
この場合はあくまでも依願退職ですので、退職金は通常の自己都合退職者と同じ扱いとなります。
4.整理解雇
不況や業績悪化が理由で事業の継続が不可能となった場合などに人員削減のために行われる解雇です。
この場合の判断として以下の要素が必要となります。
・人員削減の必要性
単に「経営が悪化した」というだけではなく、具体的な経営指標や数値をもって、どの程度経営状態が悪化しているのか、どの程度の人員削減が必要であるのかを客観的資料に基づいて説明する必要があります。
・解雇回避努力義務
解雇を決定する前に他の手段(配転・出向、希望退職の募集等)を行っているかが重要となります。
・人選の妥当性
評価者の主観に左右されず、客観的で合理的な基準に基づいて、公正に人選がなされる必要があります。
・手続きの妥当性
解雇の対象者および労働組合または労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、整理解雇について納得を得るための努力を尽くしていることが必要となります。